わたしが初めて関わった辞書が角川書店の『中国語大辞典』(全二册、1994年)であった。関わったと言っても大学院時代にカードの釈義を日本語に訳すアルバイトをしたに過ぎない。難産の辞書だったようで、その辺の事情は『香坂順一先生追悼記念論文集』(光生館2005年)に「思い出」として語られている。
『中国語大辞典』はやっと出版されたと思ったら、あっという間に中国に版権を売ってしまったらしく、《现代汉语辞海》上下册(北京大学出版社)として出版された。日本国内への輸入販売が契約上禁止されているらしいが、ネット等での購入は可能なようだ。角川書店には申し訳ないが、今思えばありがたい判断だった。でなければ、初回配本分が片付いたところで絶版となり、再販することもなかっただろうから。この《现代汉日辞海》は、『中国語大辞典』に比べて値段も安いし、紹介すると中国で買ってくる学生も現れる。
この辞書には旧白話の語彙が大量に収録されている。『水滸傳』からの用例も多い。丹念にこの辞書を引けば今年ゼミで講読する第30回の用例も見つかるはずだ。さらに詳しく調べると用例の誤り、引用回数のミス、用例訳の取り違いなどが発見できるだろう。
大修館の『中日大辞典』が物足りなくなったらこの辞書を引いてみよう。