水滸のことば



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1学期ゼミ終了

昨日は1学期最後のゼミ、現在卒業研究に取り組んでいる4年生2名の中間発表会がありました。

『水滸傳』に見られる〈与〉の用法を取りあげた発表は来年卒業研究に取り組む3年生にとって参考になったのではないでしょうか。『水滸傳』をじっくり読み、その用例を集めて分析する、これが本ゼミで卒業研究を執筆する際の基本姿勢です。

さて昨日のコンパをもって1学期のゼミも修了、2ヶ月近い夏休みです。この夏休みにじっくり『水滸傳』を精読しろ、などという野暮なことは言いません。ただ、せっかく授業に縛られないこの時期にぜひ〈中文书〉の多読をお勧めします、できれば長編を、そして多読の際は、授業とは逆にできるだけ辞書を引かずに読み進めましょう。きっと読解力がつきます。

それではまた2学期に。
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by clingmu | 2007-07-25 17:05 | ゼミ連絡

ゼミ(7/17)

今回のゼミ終了後、学生からつぎの箇所について質問を受けました。

那叶孔目已知武松是个好汉,亦自有心周全他,已把那文案改得活着。只被这知府受了张都监贿赂嘱托,不肯从轻勘来。武松窃取人财,又不得死罪,因此互相延挨,只要牢里谋他性命。

引用文の句読は100回本(排印本)によるものです。問題の箇所は下線部、手もとにある人民文学出版社の70回本(活字本)では下線部を〈不肯从轻;勘来武松窃取人财,又不得死罪〉と切っていて、どうも「ゆれ」があるようです。因みに100回本を訳した岩波文庫ではこの部分を「軽い判決を承知しません。といって武松は、ただの窃盗ですから…」と、〈勘来〉の後ろで切った読み方を取っています。

70課本のように〈从轻〉で切る場合、〈从轻〉を「軽きに従う」つまり「軽い処分にする」と解釈し、〈勘来〉を「(武松の罪状を)吟味してみると~」として〈武松窃取人财〉以下に続ける解釈になります。

〈不肯从轻勘来,武松不得死罪〉だと〈勘来〉が浮き、一方〈不肯从轻,勘来武松不得死罪〉では〈从轻〉が落ち着かないことになります。

角川の『中国語大辞典』は〈勘来〉を語彙項目として取りあげ、「推測する」とし〈勘来武松窃取人财,又不得死罪〉「武松は人の財物を盗んだが、死罪にはならないだろう」を用例として挙げていますが、語釈の際、直前の〈从轻〉を考慮したのか甚だ疑問です。

結局のところ、高島氏も述べるように「決し難い所」なのでしょう。

たった一つの句読をむぐる問題で30分にも及ぶ議論になってしまいました。これもまた『水滸傳』講読の楽しみです。
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by clingmu | 2007-07-23 15:18 | ゼミ連絡

進化するHSK

来年からHSKの試験方式が大きく変わるという情報は昨年末から聞いていた。先日、同僚のS先生から〈中国汉语水平考试改进版样卷〉なる本を渡され、モデル問題を見ることができた。S先生の意図としては、しっかり分析してGPテストに活かせ、ということだと思う。

新しい「中級」の問題を見た。核となる試験は〈听力理解〉(60題)と〈综合阅读〉(70題)からなり、130題を約130分で解く、受験生にかなりの負荷をかける試験スタイルは踏襲されている。さらにオプションとして〈口语〉と〈写作〉が加わった。すべてを受験するなら、受験生は最近流行の体力トレーニングでも導入して体を鍛える必要がありそうだ。

GPテストという視点でまず参考にすべきは中級の〈听力理解〉と〈综合阅读〉、〈综合阅读〉の分析はS先生に任せるとして、ここでは〈听力理解〉を一通り聞いた感想を述べたい。

当然のことだが従来の「初中等」より難しい。「初等」の部分がスッポリと抜け落ちた感じだ。具体的には独白に対する質問に答える問題形式が消えた。第一部分から対話形式20題となっている。対話なので話の内容は把握しやすいが、時に「人間力」を試されるような問題もあり、なかなか手強い。第二部分に従来の第三部分が入り20題、そして「新」第三部分はこれまでにない形式だ。かなり長い問題文が読まれ(2分程度)、質問が5題用意されている。各問すべて同一の選択肢A~Hから正答を選んでいくというもの。文章4題×設問5題、計20題、問題文はかなりのスピードで読まれる。

従来の初中等は対象範囲にかなりの幅があった。そのおかげで我が学科の学生が受験してもそれぞれの実力に見合った級がそれなりに認定された。だが4級が平均という専門学科の学生が、相当のリスニング力を求められる「新」中級に合格するのはかなり難しそうだ。現状では合格者10名程度か。そこでGPテストも微調整の必要がありそうだ。といった事情で…

明日(7/17)は「第1回GPテスト作成会議」の開催です。S先生、よろしく。
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by clingmu | 2007-07-16 16:58 | 教学

〈~自〉について

7/4のblogに引いた例〈枉自折武松的草料〉に見られる〈枉自〉の〈自〉は水滸でよく見かける「曲者」です。〈枉自〉の〈自〉は副詞の接尾辞として使われる例で、第30回にはこの他にも〈兀自〉〈已自〉〈也自〉などが出てきます。また水滸では〈自〉が単独で主語と述語の間に置かれる例もよく見られます。

老管营自回安平寨理事〈30-3b-1〉

この〈自〉は前後の文脈によって〈自己〉や〈自然〉といった意味に解釈できそうな場合もあるのですが、水滸では「主体を明らかにする働き」をする〈自〉がさかんに用いられます。

「主体を明らかにする働き」については7/4に配布したプリントを参照してください。これは香坂順一氏の『《水滸》語彙の研究』(光生館1987年)からコピーしたものです。この〈自〉についてはまだまだよく分からない、つまり説明不十分なところもありそうです。卒業研究のテーマとしてこの〈自〉を取り上げてみよう、という勇気のあるゼミ生はいるでしょうか?

なお、香坂順一氏には別に『白話語彙の研究』(光生館1983年)があり、いずれも近代漢語の語彙語法を考察する上でまず参考にすべき著作です。
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by clingmu | 2007-07-08 22:45 | ゼミ連絡

「折草料」(ゼミ7/3)

7/3のゼミで読んだ箇所、張都監の厚遇を受ける武松は嫁まで世話しようという張都監のありがたい申し出に対し

量小人何者之人,怎敢望恩相宅卷为妻,枉自折武松的草料。

と答える場面がありました。この〈枉自折武松的草料〉、実は同じセリフを武松は第29回でも言っています。

小人年幼,如何敢受小管营之礼,枉自折了武松的草料。(29-3b-6)

違いは〈了〉があるかないかだけです。

角川『中国語大辞典』では第29回の例を〈草料〉と〈折草料〉の2箇所に載せています。〈草料〉の項では「②自分の福分をいう.幸運の巡り合わせ」とし、第29回の用例に「(私こと)武松の分に過ぎたことでございます」という訳をつけています。そして〈折草料〉の項では「寿命を縮める」とし、第29回の用例を「むなしく武松の命が短くなるだけです」と訳しています。前者は意訳、後者は逐語訳といったところでしょうか。

さらに〈折草料〉の項には「人は一生にどれだけのものを食べるかは天が決めてあるので、これが尽きると死ぬとの思想から」という詳しい説明があり、最後に「むなしく禄を食む;職位に就くのを辞退するのに用いる」と転義が示していてかなり熱心なのですが、『水滸傳』の2例を見る限り、最後の説明については疑問が残りそうです。

以上、辞書記述に関する問題はゼミ生の指摘によるものです。今後とも丹念に辞書を引き、辞書の「不備」を見つけてください。

さて、張都監邸の武松はどうも堅苦しく、張都監戸の会話にも口語の生き生きとした躍動感がありません。その反動でしょうか、お話はいよいよ「鴛鴦楼の大殺戮」へと向かって進んでいきます。続きはまた次回のゼミで。
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by clingmu | 2007-07-04 17:23 | ゼミ連絡


水滸伝の言語に興味を抱く、ある語学教師のぼやき。ときどきゼミ連絡。
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