水滸のことば



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「速読」その後part-1

4月22日のblogに書いた「中国語を速く読む=速読」を今回は中国語学科2年生の授業で試みた。2年生の中国語学習時間は1年次週6コマ30週、1コマ90分を中国風に2時間として計算すると約360時間+2年次週5コマ約5週(5月末まで)、約50時間で計400時間強である。大学の第2外国語(週2コマ)で3年分+αといったところだ。課題文は以下の通り。

渡边恒雄,《读卖新闻》总裁兼主笔,多少年来《读卖新闻》一直是日本民族保守势力的重镇。因此渡边恒雄也一直被认为是日本“鹰派”的代表人物。《读卖新闻》过去一贯支持参拜靖国神社,认为这是日本人自己的事情,其他国家无权干涉。但是,自从2005年6月开始,已近暮年的渡边恒雄却向保守思想踩下刹车。他的第一个动作就是亲自撰写社论批评小泉参拜靖国神社,而后,他下令报社开始为期一年的《明确战争责任》系列报道。《读卖新闻》的这种突然转变在新闻界和整个日本社会引起了巨大的振荡。
CCTV《东方时空》〈岩松看日本〉2007年3月26日放送

CCTVのアナウンサーは約200字の原稿を50秒で読んでいる、ニュースなどに比べてやや速度は遅い。わたしの2年生に対する要求は、この文章を60秒以内で読む、というもの。授業ではまず文字原稿を配り意味を確認した後、音声教材をわたし、次回の授業までに「速読」の練習をしてくるよう言った。また読む際には個々の発音より速度を重視するようあえて指示した。次回の授業で一人一人読んでもらい、60秒以内に読めれば合格、平常点として加点する。

課題文はわざと読みにくそうなものを選んだ。2年生が知らない語彙や中国語で読んだことのない固有名詞などが多い文章にした。内容は何でもよかった。「ナベツネ」に個人的感情はない、念のため。

1週間後その結果は……57名中28名が合格、合格した中でも50秒前後、即ちアナウンサーとほぼ同速で読んだ学生の発音がとてもよく、語調も自然で聞いていてスムーズに内容を理解できた。一方、60秒ギリギリで通過した学生の発音を聞いていて感じたことがある。速度的には50秒前後の学生よりむしろ速く感じる学生もいたが、語調にメリハリがない、そして苦手な発音や声調の狂いが足を引っ張っているように思えた。だが、「個々の発音より速度を重視するよう」指示した手前、合格は合格である。

今回の結果から指摘できるのは、50秒前後で読んだ学生の多くが1年生の頃からピンインをきちんと読めていたということだ。発音の基礎が固まっている学生は速読にも対応できるということか。興味深いのは今回合格しなかった学生たちである。次週までさらに練習を重ね再チャレンジするよう言ってあるので、この1週間速読の練習によって、彼らが60秒の速度をクリアし、さらには発音や語調までも向上するのか? はたまた個々の発音が不安定だと速読に対応するのが困難なのか? 次週の結果から改めて「速読」の効用について考えてみたい。

不合格だった2年生はちゃんと練習してきてくれるかな?
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by clingmu | 2007-05-27 20:57 | 教学

教育法の試み

ここ数年、わたしが担当する中国語科教育法では高校等での教育実習(実習は英語で行うことが多い)直前の4年生に中国語学科の授業を担当してもらっている。今年は2名、1年生の x-class と y-class をそれぞれ1コマ担当してもらった。

大学では近年、中国語の教員免許取得希望者には英語科または国語科の免許を合わせて取るよう指導しているようだ。確かに中国語の教員免許だけを頼りに中学または高校で常勤の職を得る可能性はほぼゼロに近い。だが、真剣に英語や国語の教員を目指すのであれば、中国語を専門で学ぶ余裕はない。だから高校等で中国語を教える常勤の教員は大学時代に中国語以外を専門とする人が圧倒的に多いはずだ。逆に、大学では「無免許」で中国語を教えることができ、わたしも免許を持っていない。結局、中国語学科の学生にとって中国語の教員免許は大学で免許取得のため多くの余分な(?)単位を取ったという証でしかない、というのが実情だ。

それでも毎年数名の履修者がいる。履修者に対して時に申し訳なく思うことがある。車の免許にたとえるなら、免許を与えながら一度も路上で運転することがないということだ。せめて「路上教習」の機会だけでもと教育法履修の4年生には中国語学科1年生に中国語を教える「実習」をしてもらっている。

授業で1年生に迷惑をかけるわけにはいかないし、変なことを教えられては担当教員としても困る。入念な準備が必要だ。3年2学期の教育法で中国語の発音指導について考え、その授業内容を踏まえて4年の教育法では、教案を作り模擬授業を数回実施する。今年はわたしの編んだ発音教材から「早口言葉」と「漢詩」を使った発音練習の授業をしてもらった。授業時間は高校等の授業に合わせて約50分、授業終了後、1年生にアンケートを実施した。

アンケートの結果によれば授業はおおむね好評で、これから実習に行く学生たちのよい励みになったようだ。これまで授業を受ける側だった学生が立場を変え、違う場所から眺めた教室の風景は学生たちの目にどう映ったのだろうか? きっと新しい発見があったはずだ。よい経験になってくれればと思う。少しは教員の苦労も感じてくれたかな?

1年生にとってもこの授業は新鮮だったらしく、普段より集中力が長もちしたように感じられた。とすれば、わたしの授業も大いに改善の余地がありそうだ。そんなことにも気づかせてくれる実習授業である。
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by clingmu | 2007-05-26 21:20 | 教学

第5回ゼミ

今週のゼミでは前回に引き続き『水滸傳』第30回を精読、武松が蒋門神をやっつけ快活林からの立ち退きを命令する場面を読みました。武松は蒋門神を口汚く罵ります。

“这斯蠢汉……你这个值得什的?”

下線部の“鸟”はdiao(第3声)と読み罵語です。《现代汉语词典》にもdiao(第3声)の読みで〈旧小说中用作骂人的话〉とあります。中国中央电视台制作の《水浒传》中では何故かすべてniao(第3声)と言っています。現代語では用いられないとしても、水滸ファンとしてはやはりdiao(第3声)で読んで欲しかったなぁ。

もう一つの下線部“量”は第2声に読み「文頭にあって話し手の相手に対する軽視もしくは自己についての謙遜を表す語」と高島俊男氏『「水滸伝」語彙辞典稿』にあります。ここでは当然「相手に対する軽視」の意味です。“鸟”についても高島氏の辞書に用例がたくさん載っています。

『「水滸伝」語彙辞典稿』は未完で A ~ Y までしかありません。あと Z だけだっただけにとても残念です。しかも学会誌や紀要等に何回にも分けて掲載されている上、手書き原稿を印刷した部分も多くあります。研究室には大学院時代に A ~ Y まですべてをコピーしまとめたものがあります。その解釈は今でも充分役に立ちますので、時間があるときにでも引いてみてください。

ところで、罵語“鸟”の解釈を「我孫子」在住の学生が担当したのは単なる偶然なのでしょうか?
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by clingmu | 2007-05-17 21:37 | ゼミ連絡

教育学会@関西大学

土日は関西大学で開かれた中国語教育学会参加のため大阪へ出張した。

大会では同僚のS先生の発表があった。発表は現代GPオリジナルテスト作成に関するもの。今回の発表は今後延々と続く「五カ年計画」の序章、こんなところで議論百出となったらどうしよう、とひそかに心配していたが、さすがはS先生、スタイリッシュにさりげなく無事発表を終了、来年以降が楽しみだ。S先生ご苦労様でした。

大会では学力基準プロジェクト委員会作成の「中国語初級段階学習指導ガイドライン」が配布された。現在わたしが使用している初級テキストもこのガイドラインに照らし合わせて総点検する必要がありそうだ。さっそく教育法の授業で検証してみようかな。
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by clingmu | 2007-05-13 23:01 | ひとりごと

第4回ゼミ

昨日から『水滸傳』第30回の精読が本格的に始まりました。辞書を引き、みなで意味を考え、現代漢語との相違点を確認しながら読み進めます。今のところペースは2頁(一葉)分といったところでしょうか。図書館&研究室の『中国語大辞典』が大活躍かな? 予習をしっかりしてください。

昨夜はゼミ修了後ささやかな「勉強会」があり、夜は3年生のゼミコンパ、「lingmuゼミとは思えないにぎやかさ」とはいつもお世話になっている居酒屋の奥さんの感想でした。

わたしもおかげで楽しいひとときを過ごしました。ただ、学生たちの話す言語とわたしの言葉には現代漢語と近代漢語ほどの開きがあるのでは? とふと感じました。
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by clingmu | 2007-05-09 20:40 | ゼミ連絡

《明容與堂刻水滸傳》(排印本)

e0109427_18121035.jpg《容與堂本水滸傳》(全二冊)上海古籍出版社1988年。この本は上海人民出版社影印本を底本とする排印本(活字本)である。縦組み繁体字、影印本の「眉批」なども小さめのポイントで再現されている。

影印本を忠実に活字化しようとはしているが、「里」「裏」「裡(示偏もある)」などはすべて「裏」に統一されている。これらの文字表記は言語の時代認定に関わるものであり、近代漢語を歴史的に研究するにはやはり影印本を使わなくてはならない。

排印本では容與堂本の缺けた文字や明らかな誤刻について内閣本や120回本などで校訂し、改めた箇所を丁寧に明示するよう配慮されている。ところが影印本の「相」を「像」に黙って直すなど過度の配慮もされているようだ。

研究に使用するには問題点を含むとはいえ、現在中国で出版されている排印本(100回)の中ではもっとも信頼に足る本であろう。ゼミではこの排印本を使って卒業研究の執筆を指導している。

なお、大島吉郎編『容與堂本「水滸伝」語彙索引』(近代漢語研究会1998年)はこの排印本をテキストに用いている。
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by clingmu | 2007-05-07 20:20 | 書籍

《明容與堂刻水滸傳》(影印本)

e0109427_10353385.jpge0109427_10345489.jpge0109427_1034790.jpg《明容與堂刻水滸傳》(全四冊) 上海人民出版社1975年。本学図書館でこの影印本と出会い「水滸のことば」について考えるようになった。

文字で書かれた資料を利用して近代漢語研究を行う以上、版本は重要な意味をもつ。『水滸傳』で最も古くかつ整った版本(文繁本)は容與堂本(100回本)になる。上海人民出版社本は所謂「北京本」に基づく影印本であり、1975年という出版年からして「水滸批判」のおかげ(?)で出版された書籍であろう。

1975年はまだ文革終結前、この本はあまり日本に入って来なかったようだ。大学院時代は図書館にこの本がなく、わざわざ国会図書館まで出かけて必要な箇所だけコピーしていた。20年前国会図書館のコピー代は確か1枚50円ほどかかった。貧乏な大学院生の身にこの出費は厳しかったなぁ、当時のことが懐かしく思い出される。

日本の内閣文庫にも容與堂本が存在し、こちらは現在、台湾で出版された影印本が手もとにある。
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by clingmu | 2007-05-04 10:39 | 書籍

角川『中国語大辞典』

e0109427_18215815.jpge0109427_18221644.jpgわたしが初めて関わった辞書が角川書店の『中国語大辞典』(全二册、1994年)であった。関わったと言っても大学院時代にカードの釈義を日本語に訳すアルバイトをしたに過ぎない。難産の辞書だったようで、その辺の事情は『香坂順一先生追悼記念論文集』(光生館2005年)に「思い出」として語られている。


『中国語大辞典』はやっと出版されたと思ったら、あっという間に中国に版権を売ってしまったらしく、《现代汉语辞海》上下册(北京大学出版社)として出版された。日本国内への輸入販売が契約上禁止されているらしいが、ネット等での購入は可能なようだ。角川書店には申し訳ないが、今思えばありがたい判断だった。でなければ、初回配本分が片付いたところで絶版となり、再販することもなかっただろうから。この《现代汉日辞海》は、『中国語大辞典』に比べて値段も安いし、紹介すると中国で買ってくる学生も現れる。

この辞書には旧白話の語彙が大量に収録されている。『水滸傳』からの用例も多い。丹念にこの辞書を引けば今年ゼミで講読する第30回の用例も見つかるはずだ。さらに詳しく調べると用例の誤り、引用回数のミス、用例訳の取り違いなどが発見できるだろう。

大修館の『中日大辞典』が物足りなくなったらこの辞書を引いてみよう。
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by clingmu | 2007-05-03 10:11 | 書籍


水滸伝の言語に興味を抱く、ある語学教師のぼやき。ときどきゼミ連絡。
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