水滸のことば



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2つの「お知らせ」

大学で同じ学科に所属する若いS先生と喫茶店で打合せ&雑談。
「そろそろ3月入試の委嘱があるんじゃない?」
帰宅後,郵便受けに見慣れた緑色の封筒を発見,委嘱はわたしであった。余計な発言は慎むべきだった,深く反省している。

2つめの「お知らせ」。以前TECCを受験した妻の元へTECC「休止」の手紙が届いた。昨年も公開会場試験は行われていないが,今後は個別団体試験も含めて正式な「休止」が決定した模様。身近な学生の中にもTECCファンは確実に存在した,級別の受験でないところがよい,問題も良心的に思えた,残念だ。

「休止」といえば雑誌『中国語』も2004年3月号で「休止」したままだ。そういえば『中国語ジャーナル』年間購読継続の「お知らせ」が来ていない,こちらは大丈夫か?

中国語をめぐる市場はどうも縮小に向かっている気がする。中国ビジネス・中国株は活況? だが,ビジネスでの中国語は「ビジネス」の能力が前提,通訳に限れば現地で有能な日本語通訳をさがすのも可能だ。中国株の投資には「日本円」があればよい。中国語学科志願者の減少もある意味「時代の流れ」なのかもしれない。
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by clingmu | 2007-02-23 20:42 | ひとりごと

求む「4声+4声の地名」

先日も書いたがここ10日間ほどは1年生の教材作成に時間を費やしている。

声調の組合せ練習,「1声+1声……4声+4声」までの2音節を中国の地名で練習する。「4声+4声」の地名が見あたらない。一昔前の教材では〈大寨〉〈大庆〉などの地名が使われている。70年代ならよいのかもしれないが〈大寨〉はかなり古い,もっとも最近の農村重視の政策により復活する可能性はあるが…。工業都市として〈大庆〉の名は今もときどきニュースで耳にするが,日本人学習者にとって,〈绍兴、大连、上海〉ときて〈大庆〉では「役者不足」である。

日本の地名なら「栃木」「日立」などが思い浮かぶ,とくに「日立」は「r」と「l」およびそれに伴う「i」の発音を確認でき,理想的だ,使えないのが残念である。

「4声+4声」でどこかよい地名はないものか??
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by clingmu | 2007-02-22 22:50 | 教学

「以和為貴」?

春節も過ぎいよいよ春の訪れである。〈除夕〉には恒例の〈春节联欢晚会〉を楽しんだ…といっても〈相声〉などの「笑い」はそれなりに「笑える」ものとまったく「笑えない」ものに分かれる。この状態は何年経っても変わらない,残念だがどうにもならない。

今年の〈晚会〉で強調されたのがやはり〈和〉の字,2007年中国を代表する漢字は〈和〉に決定!という勢いだ。現在中国にはよほど「バランス」を欠いた社会が存在すると見える。

〈春节黄金周〉のCCTV〈新闻联播〉では連日,農村が取り上げられている。各地で〈“活”雷锋〉(〈相声〉でも笑いのネタになっていた)たちが大活躍のようだ,政府の農村政策のおかげで日に日に豊かになっているらしい,可哀想に…。もっとも報道といえば我が国のNHKも似たようなものか……。

今日,初詣に行ってきた。我が学科も〈和〉を重んじる気風が古くからある,ということは…。ともかく「科」内安全を祈るしかない。
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by clingmu | 2007-02-21 21:42 | ひとりごと

教材作成

先週で大学の仕事も一段落した。現在,新年度1年生用教材を見直している。

今年度から本学の中国人教師が編んだ教科書を使用しているが,その教科書に入る前の導入部「発音」は自分で作ったプリントを配布している。中国語の発音そしてピンインの綴り方規則に習熟しながら,中国語の初歩的な文法を学び,簡単な単文が言えるようにする,というコンセプトだ。

毎年改良を加えているのだが,なかなか満足するものにならない。声調・単母音ときてつぎは複母音に進むべきか,それとも子音を先にすべきか,に始まり,これに文法事項を加える。「動詞述語文」はどこで導入するか,“不”による否定は「変調」を学んでからになる,第3声連続や“不”の「変調」を習ったら「形容詞述語文」を導入し, “很冷”“不热”などの練習ができる,などなど考えるべき点は多い。

さらには発音練習にどんな単語を並べるか。無味乾燥になりがちなピンイン導入教育をできるだけ後の授業につなげたいと考えると,あれこれ教えすぎて学生は消化不良になりそうだ。なかなか悩みは尽きそうにない。
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by clingmu | 2007-02-12 21:48 | 教学

関所

昨日は学科の成績会議。1・2年生の進級がこの会議で決定する。

中国語学科現行制度では2年生の2学期から単位互換制度を利用した留学が始まる,留学すればそこは「天国」,留学受け入れ校で日本からの留学生は大切な「お客様」,「品質保証」をして送り出す本学の面子をとても重視してくださる。

そういった事情から,入学後すべての学生が例外なく通過すべき関門は,1年1・2学期と2年1学期の3つとなる,1年生にとって今回は2つめの関所,無事通過できたかな?

蛇足ながら,本学では安倍政権が提唱するはるか以前より「再チャレンジ」を推奨している。来年度も約10名ほどが1年生に「再チャレンジ」することになる。
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by clingmu | 2007-02-07 17:53 | ひとりごと

水滸との出会い

『水滸傳』を原文で初めて精読したのは大学院での恩師の授業であった。読んだのは,宋江が江州へと護送されて行く前後のお話,テキストは70回活字注釈本(上下册)を使用していたので,下冊の始まり第36回~第40回あたりだったと記憶している。

当時,現代漢語語法に関する知識がもっとあれば,現代語との比較という視点から興味深い語法現象に早く気づいていたのだろうが,学部時代には魯迅の小説や雑文ばかり読んでいた。水滸の精読で逆に現代語の語法について勉強するようになったというのが正直なところ。水滸の言語はたいへん新鮮であったし,日本語で読むよりはるかにおもしろく感じた。

水滸を読み始めて四半世紀が経つ,少しは読めるようになったのだろうか?
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by clingmu | 2007-02-05 18:38 | 水滸

入試

今日は本学の入学試験。

かつては「幕張メッセ」会場なんて時代もあった。今では本学会場ですらまだ余裕がある。20年経って元の状態へ戻ったようだ。もっとも現在では10月~3月までに5、6種類ほどの入試がある。何人の教員がすべての入試を把握しているのだろう?

最近ではAO入試なるものが登場し,教科試験は一切なし。しかし筆記試験を免除され入学した学生に,わたしは中間だ,期末だと言ってテストを課している。これでは彼らに対する「裏切り行為」ではないか。AO中間やらAO期末など多様な試験を導入すべきか……

いや,とても対応できそうにない。
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by clingmu | 2007-02-04 20:57 | ひとりごと

「水滸のことば」へようこそ

2種類の文章を紹介したい。
まずは金庸の《射雕英雄传》(广州出版社2002年)より,第7回〈比武招亲〉から。

那公子……拧过身躯,左掌往外穿出“毒蛇寻穴手”往他小腹击去。穆易向右避过,右掌疾向对方肩井穴斩下。那公子左肩微沉,避开敌指,不待左掌撤回,右掌已从自己左臂下穿出,“偷云换日”,上面左臂遮住了对方眼光,臂下这掌出敌不意,险狠之极。
(貴公子は…体をひねり,左手を突き出し「毒蛇尋穴手」という技で彼の下腹部を突いた。穆易は右に避け,右手をすばやく相手の肩のツボを目がけて切るようにふりおろした。貴公子の肩がわずかに沈んだ。貴公子は敵の指を避け,左手が戻る前にすでに右手を自分の左手の下から突き出していた。「偸雲換日」という技で,上の左手は相手の視線を遮り,下の手は敵の不意をうち,危険きわまりない。)

武俠小説らしい格闘シーンだ。この前後の一段を今年度は2年生の講読で使った。2年生にはやや難しい,格闘シーンの描写などは現実に起こりえない動作であるから,「常識」で読めない。しかも現代中国語の規範的な文章とも言い難い。学生は苦労する。そこで「この小説には翻訳があるよ」と徳間文庫の翻訳を紹介する。ところが……この翻訳本が原作に忠実ではない。上掲箇所は翻訳が基づく三联版にも,字句および筋の展開に異同こそあれ格闘シーンは存在する。ましてやこのシーン,穆易と楊康の手合わせで窮地に追い込まれた楊康が思わず「奥の手」を出す,という重要な場面。訳者は,日本語にすると冗長で面白味に欠けると判断したか。となるとこの箇所を原文で味わえる学生はなんと幸せなことか。学生たちは途中から訳本を頼らず,辞書を片手に意味を取ろうとする。ちなみに上掲日本語訳はある2年生が訳したもの。なかなかの訳である。

読解の面白味を知った学生の中にはlingmuのゼミ「近代漢語語法研究」を選択する者がたまにいる。ゼミではつぎのような文章と悪戦苦闘することになる。

武松先把两个拳头去蒋门神脸上虚影一影,忽地转身便走。蒋门神大怒,抢将来。被武松飞一脚踢起,踢中蒋门神小腹上。双手按了,便蹲下去。武松一踅,踅将过来,那只右脚早踢起,直飞在蒋门神额角上,踢着正中,望后便倒。武松追入一步,踏住胸脯,提起这醋钵儿大小拳头,望蒋门神脸上便打。〈『水滸傳』第29回〉
(武松まず両方の拳で,蒋門神の顔めがけ,わざとひらめかすや,ふいに向きをかえて逃げ出せば,蒋門神は大いに怒り,踏みこんで来るところを,武松がぱっと蹴上げた早技に,蒋門神は下腹に蹴あてられ,両手でそこをおさえると,そのまましゃがみこんでしまいました。武松,さっと近づくと見るや,早くも蹴上げた右足は,まっすぐ蒋門神の額に飛び,まん中に命中,仰向けにどっと倒れるのを,武松さらにひと足ふみこんで,胸倉をふんづけ,酢鉢ほどの大きさの拳骨をふりあげて,蒋門神の顔めがけなぐりつけます。)
※訳は『完訳水滸伝(三)』(岩波文庫)吉川孝次郎・清水茂訳,岩波書店1998年より。

いかがだろうか。金庸の文章と同じでしょ? 「近代漢語」といってもおびえる必要はない,「漢文」ではない。ゼミではさらに現代語との違いを語彙・語法面から検討することになるわけだ。

ついでながら,武松が使った技は「玉环步,鸳鸯脚」というらしい,金庸の技は進化していてより高度である(と思う)。

ここ数年このような「手口」でゼミに学生を「おさそい」している。
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by clingmu | 2007-02-03 18:49 | ごあいさつ


水滸伝の言語に興味を抱く、ある語学教師のぼやき。ときどきゼミ連絡。
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