水滸のことば



「折草料」(ゼミ7/3)

7/3のゼミで読んだ箇所、張都監の厚遇を受ける武松は嫁まで世話しようという張都監のありがたい申し出に対し

量小人何者之人,怎敢望恩相宅卷为妻,枉自折武松的草料。

と答える場面がありました。この〈枉自折武松的草料〉、実は同じセリフを武松は第29回でも言っています。

小人年幼,如何敢受小管营之礼,枉自折了武松的草料。(29-3b-6)

違いは〈了〉があるかないかだけです。

角川『中国語大辞典』では第29回の例を〈草料〉と〈折草料〉の2箇所に載せています。〈草料〉の項では「②自分の福分をいう.幸運の巡り合わせ」とし、第29回の用例に「(私こと)武松の分に過ぎたことでございます」という訳をつけています。そして〈折草料〉の項では「寿命を縮める」とし、第29回の用例を「むなしく武松の命が短くなるだけです」と訳しています。前者は意訳、後者は逐語訳といったところでしょうか。

さらに〈折草料〉の項には「人は一生にどれだけのものを食べるかは天が決めてあるので、これが尽きると死ぬとの思想から」という詳しい説明があり、最後に「むなしく禄を食む;職位に就くのを辞退するのに用いる」と転義が示していてかなり熱心なのですが、『水滸傳』の2例を見る限り、最後の説明については疑問が残りそうです。

以上、辞書記述に関する問題はゼミ生の指摘によるものです。今後とも丹念に辞書を引き、辞書の「不備」を見つけてください。

さて、張都監邸の武松はどうも堅苦しく、張都監戸の会話にも口語の生き生きとした躍動感がありません。その反動でしょうか、お話はいよいよ「鴛鴦楼の大殺戮」へと向かって進んでいきます。続きはまた次回のゼミで。
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by clingmu | 2007-07-04 17:23 | ゼミ連絡
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水滸伝の言語に興味を抱く、ある語学教師のぼやき。ときどきゼミ連絡。
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