水滸のことば



「酢鉢」のような「拳」?

この休みに金庸の武俠小説《神雕侠侣》第1巻を読んだ。ある格闘シーン,強烈なパンチを繰り出す「拳(こぶし)」の描写に〈提起醋钵般的拳头捶去〉という表現が使われていた。〈醋钵般的拳头〉(「酢鉢」のような拳)って何だろう?

ところが同じような表現が『水滸傳』の中に2例見られる。1例は以前書いた『「水滸のことば」へようこそ』に引用した第29回の〈提起这醋钵儿大小拳头〉で,もう1例は第3回の〈提起那醋钵儿大小拳头〉,29回は武松そして3回は魯智深の「拳」をこう描写している。いずれのパンチもかなり強烈そうだ。

角川の『中国語大辞典』で〈醋钵〉を引くと「陶製の鉢の一種」とあり,用例として第3回の例があがっているのだが,やはりよく分からない。『水滸傳』にはまだ他に用例があるのかもしれないが,まだ出会っていない。李逵のパンチはどうなんだろう? 『水滸傳』以外にも用例があるのだろうか?

金庸がさりげなく使っているので,今でも「拳」の比喩として普通に用いられるのだろうか? いや,きっと金庸の頭の中には『水滸傳』の文章がいっぱいつまっていて,こんな表現がさらりと出てくるのかもしれない。ふとした箇所に『水滸傳』の痕跡を見つけるのも金庸作品を読む楽しみだ。

《神雕侠侣》はあと3巻残っている。この休みにはとても読み終えられそうにない。このまま読み進めるべきか,来年度の授業準備に取りかかるか悩みどころだ。
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by clingmu | 2007-03-16 18:12 | 水滸
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水滸伝の言語に興味を抱く、ある語学教師のぼやき。ときどきゼミ連絡。
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