水滸のことば



「紙辞書」の運命

小学館『中日辞典第2版』電子化の話は前回のblogに書いた。わたしはこの先10年は本格的な中日辞典「紙辞書」が出版されないのではないかと心配している。

何年も時間をかけて辞書を編纂し出版する仕事は出版社にとってかなりの負担になる。余裕のある出版社でないと許されないことだろう。出版して5年もしないうちに電子化されてしまえば,紙辞書は当然売れなくなる。中国社会の激変と相まって辞書の命はただでさえ短くなっている。

一方で,辞書の「書き手側」の事情もある。いったん辞書の仕事を始めると学期中は授業に,休みは辞書の仕事に忙殺される。少なくともこの状態が5年は続く。大学の教員は研究者としての能力が期待されている。業績として,大量の「紙」(論文)を執筆しなくてはならない。そして辞書は業績にならない。語学教師にとって辞書は大事な仕事だと思うが,大学で必要とされるのは研究者であって語学教師ではない。誰が辞書の仕事に専念しようか?

辞書の編纂は交響曲を完成させるのに似ている。常用語・書面語・口語表現・方言語彙・成語・慣用語といったさまざまな「楽器」を調和させ一つの「楽曲」に仕上げる。ブラームスは交響曲第1番を書き上げるのに20数年を要したという,もっともこれは19世紀のお話,21世紀の今日そんな時間的猶予は望めそうにない。だが,ブラームスの交響曲は100年以上経っても不滅である。

3月17日に日本中国語学会の拡大例会で中国語辞書に関するワークショップが催される。楽しみである。
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by clingmu | 2007-03-10 17:23 | ひとりごと
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水滸伝の言語に興味を抱く、ある語学教師のぼやき。ときどきゼミ連絡。
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